Kitten Sound Atelier

当社のものづくりにおけるフレームワーク

私たちが目指すもの

 オーディオ製品にどんな役割を期待していますか?
 音を出す家電としてのアウトプット装置でしょうか。それとも楽器でしょうか。または、インテリアを構成する家具でしょうか。

 どの考え方も人それぞれ。
 だからこそ、家族や親しい間柄でも、オーディオ製品に対する考え方が違うのだと思います。

 独りでどこまでも深く音楽に没入する、それは確かにオーディオの楽しみ方の王道でしょう。

 その一方で、恋人のいる方ならば、家デートで「映画を迫力のある音で楽しみたい」「食事をしながら優雅に音楽を楽しみたい」と思うかもしれません。
 また、オーディオマニアをパートナーに持つ方であれば、パートナーに対して暖かい眼差しを向けながらも、「居間に置くならインテリアに溶け込むものにして欲しい」「お客さんや家族全員で楽しめるようにしたい」「操作が簡単ならば私だって使いたい」などと密かに思われているのではないでしょうか。

 当社では、長くお使いいただけるような製品を作るということは、そのような多彩な要望に応えることだと考えてきました。人の生活スタイルは変わっていくものです。その変化にフィットし、長く幸せに愛用されるオーディオ機器、それが私たちの理想の姿です。

 そのためには、音楽を美しく再生し、映画やスポーツ中継に臨場感を与えるのは当たり前。上質で趣味性に富み、持つ喜びも感じていただけるものでなくてはなりません。
 また、生活の中に溶け込んで違和感のないデザインを持ち、経年変化が古さではなく味となる。おばあちゃんの家の箪笥のような、日常の中に存在する道具であって欲しいと考えているのです。
 温故知新というテーマは、そのようなものを作るための原点なのです。

私たちのつくるもの

設計について

 現代のHi-Fiスピーカーは、極力箱鳴りを抑え、優秀なユニットの音を活かす方向で設計されたものが多く見られます。
 当社の作るスピーカーもその延長線上にあります。しかし、それが他と異なるのは、コストアップを容認し徹底していることです。平行面を極力排すことで定常波を発生させず、剛性により箱鳴りを抑えたエンクロージャーを基本設計としています。さらに、これを漆塗りで表面を固め、全体としての振動と共鳴を制御しています。
 また、各スピーカーユニットのみならず、ネットワーク回路までを独立した空間に納めるという、極めて贅沢な内部構造を持っています。
 ダクトについても、ボール紙の筒が採用される例が多いのですが、紙の音がのる場合があります。スピーカー本体と同じ部材でその構造と一体化させることで、エンクロージャーの剛性を増すとともに、無駄な音を出さない構造を実現させました。

 そしてそのエンクロージャーには、ドイツ製の高音質ユニットと徹底した音作りを繰り返したネットワークを搭載しています。
 端子構成は、バイワイヤー、バイアンプを前提に発展性を確保しています。

製作について

 木工製作は、定常波を抑えるために外見以上に内部構造に不定形の部分が多く、通常の木工家では手に負えません。そのため、指物製作一級技能士の工房にて製作されています。

漆という選択

 クールジャパンの一画を担う伝統工芸は、私たちの生活に古くから溶け込んできました。特に、英語でJapanが漆器を意味するように、漆塗りの道具は私たちの生活の中にあって優雅に輝き、食器から文房具に至るまで広く用いられています。
 それでは、オーディオ機器と漆仕上げはどのような相性を持つでしょうか。
 その昔、ピアノが西洋から日本に入ってきた時に、その仕上げはニス塗りの木目調から漆塗りの黒に変えられました。それは外見上の美しさ、高温多湿の環境に耐えるように、という実用上の目的は当然あったでしょう。
 そして、黒いピアノは世界を席巻していくのですが、その一方で、響板まで漆が塗られることはありませんでした。漆仕上げは響きを押さえ込んでしまうからです。
 スピーカーのエンクロージャーが天然木の響きを活かして作られていた時代には、漆仕上げは理に反していたでしょう。しかし、状況は変化し、現代では響きを抑え込む漆こそが最適な塗装とも言えるのです。
 当社の漆仕上げという選択は、経年変化が味となるという、外見上のみの判断ではないのです。
 漆仕上げに関しては、1869年(明治2年)以来、五代も続く箔、漆の職人によるものです。金箔部分については、華美に流されぬよう透き漆で輝きを沈め、品のある仕上げになっています。
 これにより、黒の鏡面仕上げは和の風格を帯び、和室にも合う落ち着いた風合いを醸し出しています。

青磁という選択

 漆とともに、日本の伝統工芸の中で、揺るぎない存在の一つが陶芸の世界です。漆同様に地域に密着したさまざまな工芸品が存在します。また、温故知新としていにしえを振り返るのであれば、中国の陶芸文化まで繋がる歴史が脈打っています。
 工芸の世界でも、これほどの広がりと深みの双方を兼ね備えたものは、他にほとんどないと言って良いでしょう。
 青磁について、当社では、群馬県の赤城山南面を本拠地とする陶芸家、綿貫哲雄氏の久呂保窯に協力をいただいております。氏は、嵯峨野大覚寺窯にて和泉良法氏に師事し、青磁、黄瀬戸の肌の美しさでは他に比類なき作品を世に送り出しています。
 陶磁器は、原料である粘土の可塑性によってさまざまなものを作ることができ、その仕上がりの美しさは他と隔絶したものがあります。
 当社では、青磁の振動に対する自己損失性の高さを活用し、実用的な制振ツールとして美と性能の高い次元で融合させた製品を作り上げております。
 なお、青磁の制振ツールとしての利用については、実用新案を申請済みです。

音作りについて

 これらの結果、生み出された鮮やかな臨場感は、一度聴いていただければご納得いただけることと思います。
 音作りとは、それを行う者の経験の中にある生音に近づき、再生音のベストのものを超えていく作業です。したがって、コンサートで聴いた経験、演奏した経験、基準とするオーディオ製品によって、その仕上がりは千差万別です。 

 作り手と聴く方の好みのマッチングの問題は、常に存在します。しかし、その問題を超越し、当社製品がハイエンドモデルとしての最低ライン以上であることは自信を持ってお約束できます。



ある日の音作りの光景。各社製品と鳴き合わせ。
裏から見ると、ネットワーク回路等全てむき出しです。